こんにちは、NOEL-KITです。
最終回の第5回は、エフェクターを作ってみます。数多あるオブジェクトの中から使い勝手の良いものを中心に学んでいければと考えています。
また、今回も音を出すパッチですので、いつものようにMaxでの作業の際の注意を書いておきます。
注意
Maxで音を出すパッチを制作していると、「数字の指定ミスで大変大きな音量が出てしまう」「知覚できない周波数の音がでている」等、予想をしていない自体が起こることがあります(例: [*~ ]に0.1と1を打ち間違えると10倍の音量が出る等)。
大切な耳や機材を守るべく「ヘッドホンでの作業を控える」「大きな音量で作業しない」等、充分注意をしなくてはいけません。
また、パッチ側で出来る音量対策の1つとしてアウトプットの前にリミッターを入れておくという方法があります([live.gain~]がデフォルトで+6db=200%の音量が設定できるため後段にセットしてあります)。
もちろんこれが完全な対策というわけではありません。作業の際は充分注意の上、ご自身の責任で制作を行ってください。
5-1-1 ディレイ
ベーシックなディレイパッチです。Maxでは[tapin~][tapout~]を組み合わせて使用します。それぞれディレイラインへの読み込み・読み出しを担当しています。また、フィードバックは[tapout~]から[tapin~]にシグナルを戻すことで実現します(ただし、フィードバックの値を大きくし過ぎないように注意してください)。
5-1-2 コムフィルター(ショートディレイとして)
Maxでよく使うオブジェクトに[comb~](コムフィルター・櫛型フィルター)があります。コムフィルターの原理は入力された音を送らせて原音に混ぜフィルター効果を出すものです。ここではショートディレイ的な共振サウンドを作る目的でコムフィルターを使っています。
5-2-1 フィルター・その1
この初級講座では、これまで[cross~]や[reson~]を取り上げましたが、今回は視覚的に分かりやすい[filtergraph~]を使ったものです。9種類のフィルターが使え、周波数・ゲイン・Qと必要なものはひととおり設定できるとても使い勝手の良いオブジェクトです。出力を[biquad~]につなぐことで簡単にフィルターを実装できます。
5-2-2 フィルター・その2
その1で使った[filtergraph~]は複数つなげてEQ的な使い方をすることができます。それぞれの出力を[pak]でまとめ[cascade~]に接続することで実現できます。
5-3 EQ(フィルター)
[fffb~]を使用した簡単なEQです。このオブジェクトはバンドパスフィルターの集合体と考えると分かりやすいです。オブジェクトには、フィルターの数・最初のフィルターの周波数・それぞれのフィルターの比率を設定しています。お好みに応じて設定することでグラフィカルなEQを作れます(例ではスライダーでゲインを0~1の範囲で調整するように設定していますが、Qを追加することもできますので、ぜひオブジェクトのヘルプを御覧ください)。
5-4 その他(いろいろ)
その他、オブジェクト単体で実装できるものの中から便利なものをいくつか紹介します。それぞれ右クリックからオブジェクトのヘルプパッチを開いて参考にしてみてください(Maxはヘルプ自体もパッチになっています)。
[stutter~]
簡易グラニュラー再生を可能にします。グレインサイズとオートグラブのon/offをいじることで簡単にグリッチサウンドを生成することができます。
omxシリーズ
ダイナミクス系のエフェクターがそろっています。この初級講座では[omx.peaklim~]を使ってきましたが、コンプレッサーも各種用意されていますのでぜひお試しください。例ではプリセットを切り替えられるようにしていますが、それぞれ細かな設定もできます(一例として[omx.5band~]に[p params]を用意しておきましたので、ダブルクリックして開いてみてください)。
また、簡単なMS処理などにも利用できるので参考にしてみてください。
[tanh~]
双曲線正接(ハイパボリックタンジェント)のオブジェクトです。関数は名前を聞いただけで頭が痛くなってくかもしれませんが…ひとまずシンプルに出力にかましてみてください。簡単にそこそこオーバーロードを緩和してサチュレーション的な効果を感じられると思います。(関数に興味がある方はnanonumさんが”Max算数教室“を連載されておりますので、ぜひ参考にしてみてください。)
また、オーバードライブに関しては千葉さんのランダムコラム(https://maxerjp.wordpress.com/2015/03/05/random-column01/)が投稿されておりますので、ぜひそちらを参考にしてみてください。
これまで全5回にわたり初級講座を掲載してきました。最初からひとつずつ真似して制作していくことで、少しでもMaxの基本的なパッチングが分かりやすく伝わっていたら幸いです。
手を動かしながら考えることで面白い発想も生まれてくると思います。ぜひ前回の4-4のパッチに今回取り上げたエフェクターを組み込んでみてください(5-2-1のフィルターはベースの出力に組み込み済みです)。
今後はいろいろ応用例等を紹介できればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします!
掲載パッチダウンロード
*Maxをお持ちでない方もMax Runtimeをインストールすることでパッチを動かすことが出来ます。